手話
不思議な夢をみました。
いつもと変わらない授業に飽きた、中学2年の透也は居眠りをしていたのです。
そこで夢を見ました。
場所はどこかわかりません。
わかるのは一人の同い年くらいの少女が道行く人に何か訴えていることだけでした。
しかし、人々は首を傾げたり、愛想笑いをして去っていきます。
(どうしてみんな去っていくのだろう…)
透也は納得がいきませんでした。
すると、透也に気づいた少女が近づいて何か訴えてきました。
そこで透也は皆が去っていく理由に気づきました。
少女は口をぱくつかせ、手で何かを訴えてくるのですが言葉が聞こえないのです。
(何を言いたいんだろう…)
透也がそう思った時、目が覚めました。
(一体どういうことが言いたかったんだろう…)
たいした夢ではなかったのですが、その時は妙に気になって、少女がしていた手の仕草が忘れられませんでした。
授業が終わり色々な人にその仕草がどんなものかを聞いて回りました。
たいていの友人はわからないと言いました。
しかし、「手話じゃないかな、それは。」
ある一人の先生はそう言いました。
「私の親が言葉を話したり聞くことができなくてね、それで手話というものを使って会話をするんだけど、君のその仕草は手話だと思うよ。意味は…聞いてください、かな?」
透也は世の中には会話ができない人がいることに驚き、そういう人達が会話をする手段があることに興味を持ちました。
透也はこれがきっかけでその先生に手話を習うようになったのです。



それから1年、高校受験の為、透也は塾に通っていました。
塾の帰り道、駅で一人の同い年くらいの少女が呆然と立っていました。
(何をしているのだろう…)
透也は不思議に思い声をかけました。
「何かお困りですか?」
しかし、少女に反応はありません。
しばらくして、やっと透也に気づいた少女は一瞬困ったような顔をして、不安げに何か手で訴えてきたのです。
それは手話でした。
夢の中では意味はわかりませんでしたが、1年前から先生から手話を習っていたせいもあり、そこではある程度意味を読み取ることができました。
「○○駅へはどう行けばいいのですか?」
透也は言葉を話せなくても物事を伝えることができること、そして読み取ることのできる喜びを知りました。
終わり